会社の廃業で解散から清算までに確認する手続き
著者・監修 ・ YDAIコンサルティング株式会社 代表
目次
会社を畳むときは、解散の決定と残る権利義務を整理する清算を分けて進めます。解散を決めた日に借入や取引先への支払義務が消えるわけではありません。株式会社の売り手経営者は、決定前から債務、契約、従業員に関する資料を集めておく必要があります。
「株主総会で廃業を決めれば手続が終わるのか」と迷う場合、解散の後に誰が清算を担い、債権者へどう知らせ、最後に何を報告するかを順に見ると整理できます。公告期間を会社全体の終了までの期間と取り違えないことも大切です。
本記事では会社法が定める株式会社の解散と清算の入口を、売り手が確認する資料とともに示します。債務の返済、従業員への対応、個別の契約処理は、それぞれ金融機関、労務の専門家、弁護士に確認してください。
本記事で分かること
- 解散前に確かめる株主の決定と債務
- 清算人と債権者への公告・催告
- 資産と債務を整理した後の決算報告
結論:廃業(解散・清算)の手続(早見表)
株式会社の解散・清算とは、解散の事由を確かめ、残る財産関係を整理して決算報告に進む手続です。会社法の2026年8月12日施行版を2026年10月21日に確認した範囲を下表にまとめます。承継や第三者への譲渡も含めて考える段階なら、会社の行く先の選択肢を先に見てください。
| 段階 | 会社側で見るもの | 法律上の入口 | 確認の要点 |
|---|---|---|---|
| 解散を決める | 定款、株主総会の資料 | 会社法第471条 | どの事由で解散するか |
| 清算を始める | 資産・債務の一覧 | 同法第475条 | 事業活動と清算を区別する |
| 清算人を定める | 定款、役員の資料 | 同法第478条 | 誰が清算事務を担うか |
| 債権者へ知らせる | 借入契約書、債権者一覧 | 同法第499条 | 官報公告と個別催告 |
| 決算を報告する | 整理した財産の記録 | 同法第507条 | 株主総会の承認 |
上の流れは「解散から何日で終わる」という工程表ではありません。残る契約や債務の内容によって確認事項は変わるため、手続の日付を一律に見積もらないでください。
解散を決める前の事業と債務の整理
解散の決定と債務の消滅は同じではありません。株主に示す事業の現状と、清算で扱う資産・債務の所在を先に整理します。
| 資料 | 解散前に見ること | 続けて相談する先 |
|---|---|---|
| 定款・株主名簿 | 決議に関わる会社の状態 | 弁護士 |
| 決算書・借入契約書 | 資産、借入、保証の所在 | 金融機関・弁護士 |
| 主要契約一覧 | 取引先との未履行の約束 | 契約の相手方・弁護士 |
株主の決定と登記の入口

会社法第471条は株式会社が解散する事由を定め、その一つに株主総会の決議があります。会社の定款に定めた事由やほかの原因も条文に含まれるため、「廃業」と呼んでいても法的にはどの事由に当たるかを確かめます。株主総会で必要な決議は会社法第309条第2項第11号の章単位の指定にも関わります(2026年8月12日施行版、2026年10月21日確認)。
売り手経営者は株主名簿と定款を用意し、株主に説明する事業の状態を決算書から整理します。登記の時期や提出書類は個々の解散事由と会社の状態で変わるため、登記に関わる手続は司法書士や弁護士に確認します。決議だけを先に済ませるより、続く清算を誰が担うかも一緒に検討しておく方が連絡を滞らせずに済みます。
株主への説明では、事業を止める意思と、法的な解散事由を分けて記録します。株主名簿の更新日、定款の版、総会へ示した資料を一組にしておけば、後から決議の前提をたどれます。事業を一部だけ残す案があるなら、決議前に株式譲渡と事業譲渡の違いも確認してください。
契約・従業員・借入の棚卸し

会社が負う借入、賃貸借、発注済みの仕事は、解散の意思決定後も確認が要ります。借入契約書には保証や通知に関する定めがある可能性があり、事務所の賃貸借には解約や原状回復の条件があります。売り手は相手先、契約書の所在、未処理の仕事、連絡担当者を一覧にして、清算人へ渡せるようにします。
従業員に関する賃金や社会保険の資料も、ほかの債務に埋もれさせません。雇用に関わる説明や手続は労務の専門家に、契約上の義務や保証は弁護士と金融機関に確認します。会社法第475条は清算が始まる原因を定めますが、その条文だけで各契約の終了方法まで決まるわけではありません。
借入契約書を読むときは、会社の借入と経営者個人の保証を別の列にします。支払期日、担保、通知先を書き出し、取引先への未履行の仕事と混ぜないようにします。従業員への説明も一律の日程で決めず、賃金や退職に関する個々の状況を労務の専門家に示してください。
清算人と債権者への手続
清算人の役割と債権者への通知を分けて追うと、会社の内側で行う整理と外側への連絡が見えます。公告だけで全ての相手への連絡が済むとは限りません。
清算人の就任と業務

会社法第478条は清算人について、取締役、定款で定める者、株主総会の決議で選任した者などを挙げています(2026年8月12日施行版、2026年10月21日確認)。経営者が必ず単独で全ての事務を行うと決めつけず、会社の定款と役員の現状から確認します。清算人へ渡す資料として、預金口座、債権、在庫、借入、継続中の契約を分けて一覧にします。
誰が就任するかと、どの専門家が実務を補助するかも別の話です。債権者との連絡や未回収の代金の確認を担当する人が曖昧だと、決算報告までの記録がつながりません。売り手は取引先ごとの窓口と資料の保管場所を明らかにし、清算人の選任や権限の判断は弁護士に相談します。
清算人へ渡す一覧は、資料名だけでなく最終更新者と保管場所を記します。たとえば売掛金の記録と入金先口座が別々の担当者にあれば、引継ぎ時に照合が要ります。所在の確認が終わらない資料にはその旨を残し、見込み額を確定した財産と同列に置かないようにします。
官報公告と個別催告

会社法第499条第1項は、債権者に債権を申し出るよう官報で公告し、分かっている債権者には各別に催告することを定めています。公告に設ける申出期間は2か月を下回れませんが、これは債権者が申し出る期間の下限です。清算手続全体が2か月で終わるという意味ではありません(2026年8月12日施行版、2026年10月21日確認)。
借入契約書と買掛金の一覧から、把握している債権者を漏らさず確認します。官報公告の手続と個別催告の対象は別に管理し、実際に誰へいつ通知したかを記録します。公告文や催告の扱いを個別に判断する場面では、清算人が弁護士や司法書士に相談します。
官報公告の準備と個別催告は、同じ債権者一覧から始めても作業記録を分けます。借入先や買掛先について、通知先の名称、住所、確認した契約、連絡した日を対応させます。公告の文面や催告対象に迷う場合は、判断を清算人と弁護士に持ち込みます。
決算報告までの確認事項
財産関係の整理が終わってから決算報告を確認します。公告の申出期間が過ぎたことだけを、会社の全手続の終了と混同しないでください。
資産・債務の整理記録

現金や預金、売掛金、在庫、設備などの所在を確かめ、回収や処分の記録を残します。反対側には借入、買掛金、税・社会保険に関わる未処理の項目を置きます。決算書の数字だけで債権者への通知の履歴は分からないため、公告と個別催告の記録も対応させます。
資産と債務の一覧は、解散を決める前に作ったものと、清算の途中で確定したものを分けます。後から判明した契約や請求があれば、その経緯を清算人と専門家で確認します。経営者個人の保証がある場合も、会社の支払いと別に金融機関・弁護士へ確認し、解散と同時に外れると考えないことが大切です。
在庫や設備を確認するときは、帳簿上の数量と現物の所在を照らします。処分や回収が済んだものと、相手の返答待ちのものを区分すると、決算報告の根拠を追いやすくなります。未処理の債権や契約を「ゼロ」と記入して閉じる前に、担当者の記録を確認します。
決算報告の承認
会社法第507条は清算事務が終了したときの決算報告と株主総会による承認を定めます(2026年8月12日施行版、2026年10月21日確認)。売り手は支払い、回収、残余財産に関する記録が決算報告とつながるかを見ます。決算報告は、廃業を決めた時点の見込み表ではなく、清算を進めた結果を示す資料です。
会社を継がせる案をまだ並べているなら、解散の決定前に事業承継・引継ぎ支援センターで相談できます。中小企業庁「事業承継の支援策」は同センターの相談対応などを原則無料と記載しています(2026年10月21日確認)。清算を選ぶ場合も、具体的な手続と残る債務は弁護士・税理士に資料を示して確認します。
決算報告へ進む前に、財産一覧の更新履歴、債権者への連絡記録、未了の契約を一つずつ照合します。廃業と承継のどちらを選ぶか迷っている段階では、中小M&Aガイドラインの確認点も参照できます。選択の可否や個別の債務処理は弁護士に確認してください。
まとめ
株式会社の廃業は、解散の決定、清算人による整理、債権者への公告と催告、決算報告を順に確認します。債務や契約は解散の決議だけで消えません。まず決算書、借入契約書、主要契約の一覧を用意し、未処理の相手先を確かめてください。
承継も選択肢として残す場合は会社の行く先の整理を読み、法令・制度の記事一覧から関連する手続を確認できます。
よくある質問
- Q. 解散を決めれば会社の債務も消えますか
- 解散を決めても会社の債務は消えません。会社法第471条は解散事由、第475条は清算の開始原因を定めており、残る財産関係は清算の中で扱います(2026年8月12日施行版、2026年10月21日確認)。借入契約書と支払先の一覧を清算人に示し、返済や保証について金融機関と弁護士に確認してください。
- Q. 債権者への公告には何を使いますか
- 会社法第499条第1項は、債権者への公告に官報を使うと定めています。同時に、会社が把握している債権者へは個別に催告する規定があります(2026年8月12日施行版、2026年10月21日確認)。公告を出せば知れている債権者への連絡も終わるとは考えず、債権者一覧と通知の記録を確認してください。
- Q. 公告期間が過ぎれば清算は終わりますか
- 公告期間が過ぎただけで清算が終わるわけではありません。会社法第499条が定める2か月を下回れない期間は債権者の申出期間の下限であり、会社全体の所要期間ではありません(2026年8月12日施行版、2026年10月21日確認)。資産・債務の整理を進めた後、同法第507条の決算報告と承認まで確認します。
出典
本記事の出典は に内容を確認しています。
- 1.会社法(2026年8月12日施行版)(laws.e-gov.go.jp)
- 2.中小M&Aガイドライン(第3版)(chusho.meti.go.jp)
- 3.事業承継の支援策(chusho.meti.go.jp)